マルク・シャガール展 「聖書」 第一期
「聖書」第一期 ~天地創造と苦難の日々~
会期: 平成21年3月31日(火)~5月31日(日)
会場: 第1展示室
1910年からパリで活躍していたシャガールは、故郷ロシア、ヴィテブスクに里帰りしていた1914年、折から勃発(ぼっぱつ)した第一次世界大戦のために出国できなくなりました。そしてロシアには革命の嵐が吹き荒れます。シャガールも社会主義政権に巻き込まれ、ヴィテブスクの人民執行委員や新しく設立されたアカデミーの校長などに任命されますが、信仰を否定されたことや同僚たちの相次ぐ背任などで、だんだんと革命に幻滅(げんめつ)していきます。
1922年、最終的にロシア革命を見限ったシャガールは国外脱出を図り、再びパリへ向かいます。旺盛(おうせい)な制作活動を再開したシャガールに、美術界の大立者であった画商ヴォラールは「旧約聖書」に材を取った銅版画による版画集の制作を依頼します。シャガールは民族のアイデンティティを強く意識し、エジプト、パレスチナ、シリアへの取材旅行を敢行、またレンブラントの銅版画の技巧を研究するためオランダにも出かけました。
1939年のヴォラールの急死や、第二次世界大戦の勃発によるアメリカへの亡命などで中断されていた《聖書》は、1956年にようやく完成しますが、その2年後、シャガールはモノクロームの銅版画に水彩で着色を試み、あらためて出版します。当館の所蔵品はこの手彩色によるものです。
今回は、全105点からなるこの版画集を、3期に分けて展示します。
ユダヤ民族の聖典に真正面から取り組んだ、シャガール畢生(ひっせい)の大作をご堪能(たんのう)ください。
油彩画
|
作 品 名 |
英 名 |
制作年 |
寸法(cm) |
|---|---|---|---|---|
1 |
村の祭り |
The Kermes |
1908 |
68.0×95.0 |
2 |
空を駆けるロバ |
The flying Donkey |
1910 |
55.0×46.4 |
3 |
路上の花束 |
Flowers on the Street |
1935 |
90.2×116.7 |
4 |
花嫁の花束 |
The Bouquet of the Bride |
1934-46 |
81.5×65.5 |
5 |
オルジュヴァルの夜 |
The Night of Orgeval |
1949 |
106.0×64.8 |
版画集《聖書》
初版1958年 Ed. 28/100 エッチング、手彩色
|
作 品 名 |
英 名 |
寸法(cm) |
|---|---|---|---|
1 |
人類創造 |
The Creation of Man |
30.5×23.0 |
2 |
箱舟の鳩 |
Noah dispatching the Dove |
31.5×24.0 |
3 |
ノアの生贄 |
Noah's Sacrifice |
29.5×23.7 |
4 |
虹 |
The Rainbow |
32.0×22.8 |
5 |
ノアの着物 |
The Mantle of Noah |
30.0×23.0 |
6 |
割礼 |
The Circumcision |
30.0×23.7 |
7 |
アブラハムと三人の天使 |
Abraham entertaining the three Angels |
30.4×24.2 |
8 |
ソドムに向かう |
The Descent towards Sodom |
30.0×23.5 |
9 |
ロトとその娘たち |
Lot and his Daughters |
31.5×24.5 |
10 |
アブラハムの生贄 |
The Sacrifice of Abraham |
30.5×23.8 |
11 |
サラの死を悼むアブラハム |
Abraham weeps over Sarah |
29.5×24.0 |
12 |
泉のほとりのリベカ |
Rebecca at the Well |
30.0×23.4 |
13 |
イサクから祝福をうけるヤコブ |
Jacob blessed by Isaac |
29.0×23.7 |
14 |
ヤコブの梯子 |
Jacob's Ladder |
29.8×24.4 |
15 |
ヤコブとラケルの出会い |
Meeting of Jacob and Rachel |
29.0×23.0 |
16 |
ヤコブと天使の格闘 |
Jacob and the Angel |
29.5×23.8 |
17 |
ラケルの墓 |
Rachel's Tomb |
23.9×30.4 |
18 |
若き羊飼いヨセフ |
Joseph, the young Shepherd |
30.0×23.5 |
19 |
ヨセフとその兄弟たち |
Joseph and his Brothers |
29.0×24.1 |
20 |
ヨセフの死を嘆き悲しむヤコブ |
Jacob weeping for Joseph |
30.2×24.8 |
21 |
ポテパルの妻 |
Potiphar's Wife |
29.5×24.8 |
22 |
パロの夢 |
Pharaoh's Dream |
28.7×22.8 |
23 |
ヨセフと兄弟たちの再会 |
Joseph recognized by his Brothers |
29.2×23.3 |
24 |
エジプトへ出立するヤコブ |
Jacob's Departure for Egypt |
30.0×24.0 |
25 |
エフライムとマナセの祝福 |
Blessing of Ephraim and Manasseh |
29.0×23.0 |
26 |
川から助け出されたモーゼ |
Moses saved from the Water |
28.7×21.7 |
27 |
燃える柴 |
The Burning Bush |
28.9×22.9 |
28 |
モーゼとアロンの出会い |
Meeting of Moses and Aaron |
29.0×22.3 |
29 |
パロの前のモーゼとアロン |
Moses and Aaron before Pharaoh |
29.0×23.0 |
30 |
モーゼと蛇 |
Moses and the Serpent |
29.5×23.0 |
31 |
エジプトを覆う闇 |
Darkness over Egypt |
28.8×23.0 |
32 |
過越祭の食事 |
The Passover |
29.0×23.0 |
33 |
出エジプト |
The Exodus from Egypt |
24.2×31.9 |
34 |
紅海の道 |
The Passage of the Red Sea |
31.7×24.0 |
35 |
モーゼの姉ミリアムの踊り |
Dance of Miriam, Sister of Moses |
29.5×23.4 |
版画集《聖書》はすべて故・大川功氏の寄贈
マルク・シャガール
Marc Chagall (1887-1985)
シャガールはロシア、現在のベラルーシ共和国にある寒村ヴィテブスクの貧しいユダヤ人の家庭に生まれ、帝都ペテルブルグの美術学校で学びました。
1910年から14年までパリに住み、詩人サンドラール、アポリネールらと親交を結びます。キュビスムの空間的効果、ドローネーらの鮮烈な色彩表現に影響を受けましたが、子供の頃の記憶からイメージを引き出し、詩的で豊穣な、シャガールならではの幻想的な様式を展開しました。
1914年、ベルリンの表現主義の牙城シュトゥルム画廊で個展を開催、その後も同画廊と関係を保ち、ドイツ表現主義の運動に影響を与えました。二度にわたる世界大戦の戦火や、ヨーロッパ中を踏みにじったナチ政権によるユダヤ民族迫害、アメリカへの亡命、制作の霊感の源であった愛妻ベラの死去など、さまざまな苦難を乗り越えて画業を深め、世界中の人々に愛と希望を与え続けました。
シャガールは1950年から南仏のヴァンスに定住しました。晩年にいたるまで旺盛な制作意欲を発揮しましたが、1985年に惜しまれつつ死去しました。享年97歳でした。
版画集《聖書》
The Bible, 1958
1922年、ロシアからパリへ向かう途中、シャガールはベルリンに滞在し、版画家シュトゥルックから銅版画の技法を学びます。その後シャガールは画商ヴォラールから「旧約聖書」に材を取った銅版画による版画集の制作を依頼されます。自らのアイデンティティを強く意識したユダヤ人シャガールは、エジプト、パレスチナ、シリアへ取材旅行を敢行し、またレンブラントの技巧を研究するためオランダにも出かけました。
《聖書》はヴォラールが急死した1939年の段階で66点制作されていましたが、第二次世界大戦の勃発や自身のアメリカへの亡命などで中断され、再び着手されたのは1952年になってからでした。版画集は1956年に完成しますが、2年後、シャガールはモノクロームの銅版画に水彩で着色を試み、出版します。高知県立美術館の所蔵品はこの手彩色版です。
【予告】
「聖書」第二期~モーゼの十戒と終わりなき戦い~
6月2日(火)~7月20日(月)
「聖書」第三期 ~ソロモンの栄華と民族の興亡~
7月22日(水)~9月13日(日)
KoMPal会員(年会費5,000円)、年間観覧券所持者(2,500円)は、無料でご覧いただけます。













